イロマチディープ・チャイナ

裏風俗、心霊スポット、憩いのバーなど、中国のディープスポットをご紹介。中国の釣り情報やコラムも書きます。

甘粛懐メロ続き。この街の「?」と日本人が中国を誤解する構造的必然について

羌族のカラオケ酒場でいじめられた記事の続きだ。

続いては、この街について論考してみたい。結局、この街は「意味不明」なのだが。

iromachideep.hatenablog.com

 

貧しい地方に充実する娯楽施設という矛盾

 最後は気分が悪かったが、それでも羌族のカラオケ居酒屋は面白かった。

アルコール・ハラスメントとぼったくりの対象になった私はさておいて、他の客たちは皆が楽しそうだった。彼らはここで故郷の日々を思い返すのだろう。そんな彼らを見ていると、心に込み上げるものがあった。

しかし、何よりも面白いと思ったのが、こんな地方都市で「羌族の、羌族による、羌族のためのカラオケ居酒屋」が存在したということだ。

日本で言うならば、アイヌ族によって運営される、アイヌ族のみをマーケティング対象とした、アイヌ語でのカラオケを売りとする居酒屋を網走で発見したような驚きだ。ここでは、そういった営業方法で店の経営が成り立っているのだ。

このように高度に分化されたサービスが提供されているということは、この街の娯楽産業がある程度成熟していることと、顧客に成り得る一定層の羌族が、少数民族は総じて所得が総じて低いのにも拘らず、反復・継続して店に通うことが出来るだけの所得を得ていることを示している

それが何よりも驚きだと言えるのは、貧しい甘粛省だからだ。貧しい甘粛の地方都市ですら、ここまで「都市化」がされているのだ。

また、マッサージ嬢(風俗ではない)でわざわざ省都「蘭州」やお隣の陝西省から出稼ぎにこっちまで来ている人もいた。この街は一体、何なのだ?

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*劉家峡鎮の近くの湖では、ニジマスの養殖が盛んに推奨されており、成功を収めつつあるようだ。とはいえ、これくらいしか産業がないはずなのに?未だに、なぜあの街があそこまで栄えているのかが分からない。漁村にクラブが建つだろうか?

 

一方、ここから隣の康楽県では、今年の九月にも貧困を苦とした一家心中事件が起きて、全国ニュースを騒がせた。確かに甘粛省一帯は貧しい。統計にも示されている。

だが、それでも豊かになっている地域や地区はある。そして、実際に行ってみた時の実感は、「トップ級に貧しい甘粛省」というイメージとは異なるのだ。

それは、貧しいと言われる貴州省へ行った時もそうだった。貴州の農村では、古ぼけた木造建築の農家にも日本製の電気冷蔵庫が備え付けてあったのには驚いた。

2006年にようやく電気が通ったなどといった話を聞いていた貧しいはずの地域だったが、案外「豊か」で拍子抜けしてしまった。

 

中国を誤解する小日本の必然

中国人が日本へ「爆買」に来た時、日本人は意外だったのではないだろうか。中国人がそこまで豊かだという印象は日本人にはなかったはずだ。それでも、金持ちの中国人が大勢いた。

日本へ旅行に来れるだけの所得を持った人は一部だとしても、その一部があまりにも多すぎて、あるいはその一部以外の人口もまた多すぎて、イメージを掴むことが極めて難しい。それは、一つの空間にいくつもの国が存在しているかのようだ。

そして、変化のスピードがケタ違いに速い。だから、日本が中国を誤解してしまうのは必然の成り行きなのだ。

そういうわけで、我々は結局のところ構造的に中国を知らないし、誤解している。中国に「格差がある、多面性がある」とは理解していたとしても、その多面性の一つ一つの複雑さにはまるで追い付くことが出来ない。そうして、各人の「中国観」と呼ばれるものは、必然的に歪んで実像から乖離したものになっているのだ。こっちに来ても分からない。島国にいたら尚更のことだ。

そうして、またしても自らの無知を痛感した甘粛の夜だった。今後とも、中国の裏通りを歩いていこうと心に固く誓う私であった。