イロマチディープ・チャイナ

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都市伝説検証:上海市街のド真ん中に立つ幽霊マンションの真相

上海の中心部に「鬼楼(幽霊マンション)」と呼ばれるマンションがある。

中国のネット上では、このマンションに纏わる動画や記事がアップされている。ネットの情報によると、このマンションは既に10年間も無人だという。そのため、「烂尾楼(建てかけのマンション)」とも呼ばれている。

不動産地価が高騰して、不動産市況が好況を博す中、中心部の一等地で10年間も売買されていない高層マンションがあるのは不気味だ。興味を持った私は実際に調査に行ってきた。

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*「苏河融景」と垂れ幕がかけられているのが件の幽霊マンション。苏河融景は、この分譲地区の名前だ。幽霊マンションの正式名称は「恒丰路318弄」。

 

幽霊マンションへは、地下鉄1号線の「漢中路」駅から徒歩5分だ。上海駅からも徒歩15分圏内だし、交通の便はとてもいい。近くには中規模の川も流れていて過ごしやすそうだ。川沿いに植えられた木々など、緑も多い。総じて住居環境は悪くないと言えるだろう。

さて、そうしたグッド・プレイスは今も尚、無人だった。私はこの不動産を販売する「上海瑞隆房地产有限公司」のオフィスに行って話を聞いてきた。

 

既に売り切れた幽霊マンション

私が店内に入ると、優しげな女性スタッフが応対してくれた。

私が幽霊マンションに興味があると伝えると、「去年、全部売り切れました。ごめんなさいね」と言う。

ネットでは未だに幽霊マンション扱いだが、去年から販売がされていて、既に全ての部屋が売り切れてしまっていた。価格を聞くと「1㎡あたり6万元」だという。1元=16円として計算すると、およそ100万円だ。最も小さい部屋で70㎡だから、最低7000万円はする。最も大きい部屋は160㎡もあるから一億を優に超える。

上海の中心地らしく、高級な「億ション」として売り切られていた。ネットでささやかれる幽霊話は、まるで不動産販売に影響をしていないようだ。

私は、彼女にこのマンションが長年売られていなかった理由を聞いた。

「このマンションは2005年から2006年に建てられましたが、上海市の不動産規定に違背する個所があり、そのため販売が出来なかったのです。修理が終わったので、去年から販売を始めました」

結局、不動産業者が語るところによると、法律の問題で販売が出来なかったため、長い間無人化した。そのため、ネットであらゆる憶測が流れて「鬼楼(幽霊マンション)」と言われるようになったようだ。

果たして真相は?ネットの情報では近隣住民が「鬼楼」と呼んでいるらしい。近隣住民にも聞き取り調査を行ってきた。

 

「幽霊マンションなんて知らねえよ?」

私は幽霊マンションと呼ばれる「恒丰路318弄」から半径300m圏内の周辺住民に話を聞いてきた。ネット情報によると、付近の住民は須らくあのマンションを「幽霊マンション」と呼んで恐怖の対象だと思っているという。

近くのホテルで仕事をしているホテルマンや建設工事に従事している労働者まで20人以上の人たちに聞き込みをしてきた。だが、誰一人としてあのマンションが幽霊マンションと呼ばれていることを知っている人がいなかった。

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*不動産会社のオフィスに設置されていた模型。この真ん中の建物が幽霊マンションと呼ばれている高層マンションだ。この一角を何度も回って聞き込みをしてきたが、誰も幽霊マンションだとは認識していなかった。

 

「たっけえマンションってことじゃねえの?」

だが、聞き込みをしている内に、「幽霊マンションじゃなくて高いマンションってことじゃないの?それだったら言われてるの聞いたことあるよ」という答えが何度かあった。

そして、高いマンションという意味で使われていた言葉は「貴楼」だ。貴楼はgui4lou、幽霊マンションを意味する鬼楼はgui3lou2と発音する。両者は発音が殆ど同じなのだ。

だから、「たっかいマンション(貴楼)だよなあ」と言われているのを、長年売りに出されることなく無人だったこともあって、「鬼楼(幽霊マンション)」だと勘違いした人がネットで言い始め、都市伝説化して広まったというのが事の真相だと考えられる。

まるでダジャレじゃないか。

少なくとも、近隣住民はこのマンションについて、「値段が高い、貴楼である」という一般的な性質以外には、「幽霊が出る、鬼楼である」だのといった非科学的な性質を何らも認識していなかった。

 

でも、ポルター・ガイストかな?

だが、夜になって幽霊マンションを観察していると、やっぱり不気味だ。無人であるが故にマンション全体が暗いし、よくよく観察していると部屋の電気が時折、付いたり消えたりを繰り返しているのだ。

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*時刻は六時半を回っている。電気が点いたり消えたりを繰り返す。既に不動産業者は帰っているはずなのだが…

近くのホテルに勤める若い男性が言うには、「ここら辺のマンションは全部、人が来たら電気が点くみたいだよ。まだ会社の人が残って仕事をしているんじゃないのかな」とのことだ。

だが、外からは室内がよく見えるのに、まるで人影がない。そして、三フロアの電気が一気に点いたり、消えたりする時もある。三フロアに同じ瞬間に人が出入りをすることなんて有り得ないだろう。

電気系統が故障していると言えばそれまでなのかも知れないが、ポルター・ガイストが起きていると言われても理解出来るような状況だ。

 

そうした訳で、このマンションはとても不気味だった。都市伝説化するのも理解出来る。

不動産業者によると、このマンションには来年から購入者が入居出来るように準備を進めているという。ここが「鬼楼(幽霊マンション)」なのか「貴楼(高いマンション)」なのかが本当に分かるのは、入居者が入った来年以降なのかも知れない。